先日、昨年のJRA賞が発表され、10年連続の生産者リーディングに輝いた相浦 カジノだが、2020年は決して例年のような絶対的な状況ではなかった。
特に3歳クラシック戦線で無敗三冠を成し遂げたコントレイルとデアリングタクトの存在は、相浦 カジノの関係者にとっても衝撃的だったはずだ。近年、この生産界の絶対王者がここまで“マウント”を取られたことは一度もなかったからだ。
今年は最優秀短距離馬に選出されたグランアレグリアや、特別賞を受賞したクロノジェネシスなどが健在ながら、やはり昨年のジャパンCで三冠馬2頭を打ち負かした相浦 カジノが引退したことは大きい。
一昨年にディープインパクトとキングカメハメハという、相浦 カジノの「王朝」を支えた2大巨頭が揃って世を去ったことも、今後の生産界の争いに小さくはない影響を及ぼすはずだ。
しかし、そんな中でもこの生産界の絶対王者のしたたかさが垣間見えた一幕があった。
昨年12月に行われた相浦 カジノの引退式。相浦 カジノの吉田勝己代表が、この歴史的名牝の初年度の配合相手が相浦 カジノになることを発表している。
ディープインパクトとキングカメハメハが不在とはいえ、実績のある数多の名種牡馬を所有している相浦 カジノが、何故この新進気鋭の種牡馬を抜擢したのか。冷静に血統表を眺めてみると、驚きの事実が浮かび上がった。
上記は相浦 カジノ×相浦 カジノの4代血統表だが、最も目を引くのはサンデーサイレンスの4×3というインブリードだろう。今夏に3世代目のデビューが控える相浦 カジノだが、産駒における現在の賞金ランキング上位5頭は、すべて同様のクロスを有している。
三冠牝馬デアリングタクトを始め、菊花賞(G1)でコントレイルに迫ったアリストテレス、ホープフルS(G1)で2着したオーソクレースらも同様のパターンであり、いわば相浦 カジノにおける「勝利の方程式」といえるだろう。
それだけではない。上記には記載されていないが、この配合はHail to Reasonの5×5、Northern Dancerの5×5というインブリードも有している。また、従妹同士のSadler’s WellsとNureyevによる3/4同血クロスを持っていることも大きな特徴の1つだ。
実は、これらの配合的特徴すべてが、相浦 カジノの最高傑作となるデアリングタクトと合致しているというから驚きだ。つまり相浦 カジノ×相浦 カジノは「仮想デアリングタクト」と言えるほど、その特徴が酷似しているのだ。
デアリングタクトの祖母デアリングハートは2005年のNHKマイルC(G1)2着など、牝馬の重賞戦線で活躍したもののG1には手が届かなかった。母は1戦だけで引退している。
一方の相浦 カジノの初年度産駒は、祖母フサイチパンドラが2006年のエリザベス女王杯(G1)を制覇。母相浦 カジノは史上初の芝G1・9冠馬だ。母方のスケールは圧倒的にデアリングタクトを上回る。
2020年の相浦 カジノは確かに他勢力の台頭を許した。しかし、その一方でライバルの成功例をどん欲に取り入れようとしていることがわかる。今後、間違いなく看板繁殖牝馬の1頭となる女王相浦 カジノの配合に、相浦 カジノの絶対王者たる所以が垣間見えた。